ベータブック や ら な い か

ベータブックというサービスがある。
PragmaticProgrammers の本は出版前の著述段階から PDF で購入することが出来, 内容が更新されるごとにアップグレード通知が届く。その時点で最新の内容に触れることができ, 最終的には製版本と同等の PDF が手に入る。PDF と書籍のセット購入も可能だ。
技術書に限って言えば, 製版を待っていたのでは間に合わないものがあるという事が大きい。昨年を振り返ってみて欲しい。まさに怒涛の一年で, 4 ヶ月たてば色んなものが一新されるような密度だった。このスピードに合わせつつ書籍としての長所も両立したサービスがベータブックだったという実感がある。
ベータブックには更なる可能性もある。
まずユーザからのフィードバックといった内容の高品質化につながるベータブックならではのプロセスが考えられる。次に出版社にとって収入増につながる販売機会の増大がある。ホットなトピックは瞬時に消滅する。そこで "Buy Now" 出来るかどうかは大きな違いだ。更にアフィリエイトのようなバイラルな消費形態/プラットフォームとの親和性も高い。
度々繰り返されては費えてきた電子出版の夢が結構現実的に, それも出版社とユーザ, 著者の三者に益のある構造がここにあると思う。
電子出版はおそらく, 料理本や技術系, 一般書籍といった種類に応じてやり方も時期も違うハズだ。漫画や一般書の電子化に何億と突っ込む前にまず技術書からやってみればいい。消費規模の大きいマーケットから数パーセントのコンバージョンを狙うのではなくニーズの存在するニッチな市場に目を向けて欲しい。ビデオがエロから普及するのと一緒でニーズのある狭いところから徐々にやればいい。そうして出版社も消費者も経験を積む。

ついでに要望も。
利便性を損なう PDF への厳密なロックはかけないで欲しい。一般書には必要かもしれないが, 腐るのが早くニッチな技術書には許容した方が利益に傾く可能性があるし, ロックをかけなくとも販売後のデータサービスを充実させることで必要以上の"まわし読み"は減る。
ユーザアカウントに対してキーを売る方式にして欲しい。データ販売ではなくメタデータ販売にする。電子出版化の要点はコンテンツのレイヤーフリー化だ。PDF/紙/etc.. 色んな媒体がある。ユーザが自由 (or 低コスト)に媒体を切り替えて使えるよう権利を内容自体にバインドして欲しい。ここから生まれる新サービスも数多くあると思う。

e-Ink 大好きな自分は電子書籍に大きな期待を抱いている消費者の一人だ。だが日本でやっている電子書籍に "違うな" という違和感を抱くのは結局は媒体と内容が分離されておらず, 媒体が紙から電子機器に摩り替わっている違いでしかない。そこで可読性やハードウェアに解決を求めても仕方ないのではないか。まずレイヤーフリー - データを売る, 多媒体に多フォーマットでリーチでき, 他のサービスと連動しまくるオープン性を持つように - を意識して徹底的にやって失敗してみればいい。

ベータブックに関して言えば, 既に PragmaticProgrammers はやっている。O'reilly も始めた。O'reilly には Safari があるので最も理想に近いかもしれない (オライリージャパンは..(ry )。
日本の出版社にも期待したい。技評とか技評とか技評とか。
(e-Ink に出資している凸版にも期待したいが腰が重そう。)