Writery はすべてを編み込む

Google の Writely 買収が話題になっているが, 予想が当たっているのであれば, という仮定でもう一段進めてみる。Google はこういう事をやりたくて, writely はそのための買収なんじゃないの, という予想だ。

writely のキーワードは "編む" だ。writely は Google の既存サービスを一つに編み込む中核的な役割を果たす。

この買収話と共に「Google は次の Office を狙っている」といったコメントをよく目にするが, それには注意して考える事がある。"次の Office" では主役と舞台が入れ替わるという事だ。
Microsoft Office は企業での採用シェアを土台に一時代を築き上げたが Google が目指す市場はまず個人だ。企業と平行して個人の市場/世界が形成され台頭する。企業は今も将来も経済的に大きなパイだが Google はまずこの個人向けの Office を狙うだろう。ここでは Excel や Word (またはそのクローン) も重要だが, メールや検索, RSS, News といったツールの方が個人向けではより重要な構成要素だ。Office という呼称よりライフツールという呼称の方が適しているかも知れない。
舞台, つまり利用シーンも異なってくる。サービスを利用する場所はコンピュータの前という固定された一点から生活空間のあらゆる場所と時間に広がる。場所, 空間, 道具が知性を持ち人間の生活や行動を助けオンデマンドにサービスを提供するユビキタスが描く社会に近いものがゆるやかに構成される, "次の Office" が指すのはそこで機能する主要サービス群の事になるだろう。

何でもいい, 何かの情報操作を行う時, まず何から始めるだろうか。大抵が "書く" ではないだろうか。人が意識的に行う情報創出行為 (無意識に行う情報送出行為もある。see ライフログ, データシャドウ) は大抵 "書く" 事から始まる。
そのための Writely だ。writing アプリケーションは, もはやインストールベースのソフトウェアでは用をなさず, 必要な時にオンデマンドで現れ, その場にインジェクションされる - 寄生して機能するアプリケーションでなければならない。なので Javascript の Writely なのだ (当面は Javascript だがそのうち UI Engine のような他の技術にシフトするだろう)。

最初は Writely は Google サービスの中に現れ緩やかにサービス間を取り持つと思う。GoogleDesktop に載るかも知れないし, GMailBlogger.com, Firefox プラグインDashboard かも知れない。兎に角 "いつも使っているどこか" か "使いやすいどこか" が Writely に置き換わる。既に wirting のために存在するインタフェースを置き換える方向と情報を収集している時 (情報送出のモチベーションが最も発生しやすい時) にワンクリックで呼び出せる writing インタフェースを提供する方向の二つが考えられる。
Writely からは GMail や GoogleBase に "publish" する機能が付くだろう。これがメインだ。日常の中にある "Google と接する部分" をより広げていく。
また関連語句等をキーにして GMail や GoogleDesktop の検索結果, GoogleReader の情報といったユーザをサポートする情報を (勿論 広告と一緒に) インジェクションするだろう。
こうやって Google 間のサービスがつながっていく。Google を媒介として Wikipedia のような情報群もこの段階でつながる。
GoogleBase や GoogleReader といった今は存在感の薄いサービスも writely のような存在があればまた意味が変わってくる。

次は web の中に Writely が広がる番だ。web でブラウジングして誰かの weblog を見たとき, その場で wirtely を立ち上げて weblog を書き blogger に publish したり, 注釈を入れたものをオンラインのドキュメントレポジトリに送ったり, 料理レシピを見ているのであれば必要な材料をインポートして GoogleBase から宅配業者に送る事になるかもしれない。Google 製 writing インタフェースが web 上のあらゆるサービスへの入り口となる。

その次に起こる事こそ本番で, 物理空間へのマッピングだ。もう Google の恩恵に預かるのに PC は不要で, その時その場所に応じたインタフェースに Google のサービスがインジェクションされる。
Google が提供しているのは "サービス" であって, PC に束縛されない。ソフトウェアの時代と言われる Windows が支配的だった昔の世界の下位層は PC だったが, 来るべきサービスの時代の下位層は HTTP, web だ。
web サービスがインジェクションされるべきインタフェース, 八百八万の神の依代となる "PC 以外の何か" がまだ登場していないため大きな動きは無いが堰が切られるのを待ってダムに水がたまるようなもので, Google は着々と準備を進めその瞬間を待っている (RayOzzie がトップに立った事で MS も競争に加わるだろう)。
以前 GooglePC の噂が出ていたがこの空隙を埋めるための何か, 例えば Google プレート - NintendoDS Lite よりハンディで使いやすい Google サービスを呼び込むためのデバイス - なら出てもおかしくはないと思っている。勿論, ここも writely (かそれに類する各種サービスにつながる writing インタフェース) が活躍する。

話が飛躍しまくったが writely のキーワードは "編み込む" だ。サービス同士が wiretly でどうつながっていくのか, 楽しみにしている。

# 断定的に書いたけど書いた本人がそれほど信じてないので.. まぁ予想なんて笑ってすませるモノ。